野村美月 『“文学少女”と繋がれた愚者』
帰りの機内で読んだのは,野村美月(のむら・みづき)『“文学少女”と繋がれた愚者(フール)』(2007年1月,ISBN:4757730845)。シリーズ第3作。前2作はいずれも羽田空港を経由した時に読んでいるので,今回も読まなくてはいけないような気が……
あれれ? 遠子先輩って,こんなに愛らしい存在でしたっけ? 竹岡美穂が描く口絵の出来が良いせいでしょうか。それとも,シリーズの進行に伴ってキャラクターが練り上げられてきたせいでしょうか。導入部において繰り広げられる《日常》の場面が愛おしい。古典とのオーバーラップを特質とする当シリーズ,今回は武者小路実篤の『友情』をモティーフにします。三角関係が小説空間と作中世界とで重なり合う。2つの位相で三角関係が同時並列に動き回るので,追いかけるのが大変ですけれど。
以前から気になって思っていることですが,引用文に使っているフォント,重すぎませんか。引き合いに出されている文章の文圧が高すぎます。お吸い物を含んで香りを味わっているところに煙草と香水をくらったような感じがします。
閑話休題。
図書館の本が切り裂かれていた事件は,犯人と目される人物は挙がっているのに動機が不明なまま。文化祭で劇を上演している最中に“文学少女”の謎解きが行われます。ファミ通文庫なのにミステリーしてます。加えて,オーバーラップを上手く効かせて大団円に持ち込んでいるところは見事でした。