葉村哲 『この広い世界にふたりぼっち』

 午後に仕事をこなしての帰り道。運転をしながら考えを巡らせているうちに,精神作用が妙な方向に向かってしまいました。いわゆる厭世観。これはちょっと沈静させないといけない。こういう時は適度に暗いものを読むのがいい。それで本棚から取りだしたのが葉村哲(はむら・てつ)『この広い世界にふたりぼっち』(ISBN:4840124000)。

《あらすじ》
中学生の女の子が黒いセーラー服を着て歩いていました。
女の子は白い狼と結婚しました。
鞭を手にした女の子はナイフを持った女の子と戦いました。

――要約は間違えていないはずなのですが,まったく伝わらないと思います。おそらくストーリーを掴むための読み物ではないからでしょう。
 ところが,すげなく駄作と切り捨てるのは躊躇するという出来なところが扱いに困る。何がどうしてこうなっているのか分からないというのに,科白(セリフ)が粋(いき)に決まっているのが6箇所ほど。見どころはありそう,な気もするんだよなぁ……
 目下の悩みは,この作品をどう評価したものか,です。褒めたいような貶(けな)したいような,複合的心境。