連城三紀彦 『戻り川心中』

 昨年5月,新潟でかんでたくまさんとお会いしたときに褒めていたので買っておいた連城三紀彦(れんじょう・みきひこ)『戻り川心中』を読みました。1980年の刊行ですが,入手したのは光文社文庫版(2006年,ISBN:4334740006)。
 大正の頃を舞台に設定した5つの短編。いずれにおいても〈花〉が要となっており,藤,桔梗,桐,白蓮,菖蒲が物語に色を添える。否,添えるどころではなく,〈花〉によって解決の糸口が示唆される。そこで語られるのは殺人事件であり,暴かれるのは〈華〉すなわち女性達を巻き込んだ出来事の真相。
 推理小説であり,恋愛小説であり,時代小説でもある。
 文章そのものが秀麗であるうえ,組み立ても美しい。良いものを読みました。

追記。『桔梗の宿』に挿話として出てくる《八百屋お七》。既視感があって引っかかっていたのですが…… 思い出した。これ,桜庭一樹砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に出てくる《クイズ》ですね。