魁 『死神のキョウ』

 (かい)の『死神のキョウ』(ISBN:4758040028)を読みました。
 本編開始3頁目,

「はじめまして,死神です。あなたのことを守りにきました」

とヒロインが自己紹介。導入パターンは安定感ある《ある日突然,女の子が》型。この流れだと,ヒロインの言い分を信じてファンタジーな非日常に向かうか,それともヒロインを妄想少女であると規定して日常に留まるか,ということになります。が,本作の場合は割と早めに正体が明かされます。そのせいで,後半の山場で使われそうなシーンが真ん中に登場しており,中味(なかあじ)が悪いという構成に触れることになります。
 その後,結末で一波乱と思いきや,あっけなく収束してしまいました。続刊を出すために含みを残しておいたのだろうか――といぶかしんでしまうような終わり方。目論見では,これまた鉄壁パターンである《幼いときの約束》で盛り上げようとしていたのでしょうし,事実,後半の山場になっているのですが,どうも伏線を張っておく仕込みが足りなかったようで……。
 魁に対しては,『CLANNAD』の藤林杏(きょう)シナリオの作者という枕詞が現状,最も適切であろうかと思いますが,本作の「キョウ」と「杏」は区別が難しいです(笑) キャラ同士の生き生きとした掛け合いが持ち味となっているところも共通。
 で,ここまで書いてからISBNを調べたところで第2巻が出ていることに気が付きました。ん〜 本作は悪くはなかったのですが,作者を指名買いの対象に含めるほどには入れ込めませんでした。