泡坂妻夫 『乱れからくり』
文学研究科の読書会に参加。今回のお題は,本年2月に逝去した泡坂妻夫(あわさか・つまお)の追悼で『乱れからくり』(ISBN:4488402127)。1976年の作品であり,翌年には本作で日本推理作家協会賞を受賞している。書名の連絡が来たときに蘭宮涼が思い浮かんだのは内緒。
本作は,とある玩具製造業者に連続して降りかかった不幸を元警察官と元ボクサーとが追っていく筋立て。この時代にしてはキャラ立ちしている探偵&助手が畳みかけるようにストーリーを進めていくのですが,よくよく事件について考えてみると結構ずさん。結末では,ある意図のために犯罪が計画されたのだろう――ということになっているけれども,それが目的だったら難しい殺人ではなく***を隠匿してしまえばいいだけのことじゃないの?
そんな疑問を抱かせないのは導入部の力ですね。依頼者の男は,空港へ向かうために乗車していたタクシーに隕石が直撃し引火に巻き込まれて死亡(!?) このシーンがなければ,凡百のバカミスで終わっていたことでしょう。