西尾維新 『囮物語』

 西尾維新(にしお・いしん)の新刊『囮物語(おとりものがたり)』(ISBN:4062837765)を読了。
 『猫物語〈白〉』以降の第二部では,阿良々木君が語り手の立場から降り,ヒロイン達による一人称視点で物語が紡がれております。第一部では西尾維新の軽妙な語り口が冴えておりましたが,この第二部では“あの”西尾維新がキャラクターの内面を掘り下げているところが妙味でしょう。
 今回のヒロインは撫子。あざとい可愛さを演じるために登場していた彼女が,撫子が暦お兄ちゃんとの関係を自覚するのが今回のお話。“かの”西尾維新が,近代文学の精神たる人格的成長の物語を物しているということに,時代の諸相が動いていることを感じます。
 しかし,まぁ,終幕の後日談の投げっぷりは,かねてからの西尾維新なのでした。