坂の上の雲 (2)

新装版 坂の上の雲 (2) (文春文庫)
 司馬遼太郎坂の上の雲』第2巻読了。実は、かなり前に最後まで読み終えてしまっています。1冊ごとに記録しようと思っていたのに、面白くて次々と読み進めているうちに、書き残す機会を逸してしまったのでした。
 第2巻は、日清戦争の周辺。ここで注目したいのは、伊藤博文について。伊藤は当時の首相であったわけですが、朝鮮への出兵が戦争へと発展することのないよう訓辞を出していたというのです(61頁)。陸軍大臣大山巌にしても同じ。ではどうして戦争になったかについて、司馬は「大日本帝国憲法=プロシャ主義=参謀本部方式」を理由に挙げます。出兵するかは閣議が決定するものの、その後のはできないというのが明治憲法における統帥権。起草者の伊藤ですら、コントロールできなかったというのです。プロシャ主義とは特に陸軍に見られた思想で、端的に言えば敵の不意を衝くこと。先制攻撃を企図する参謀次長・川上操六と、それに同調する外務大臣陸奥宗光とにより、日清戦争が勃発することになりました。
 海軍にまつわるところでは、スペインと英国の力関係が逆転した理由を説いたくだりが興味深い(250頁)。15世紀の時点では、スペイン人の持つ熱血性、熱狂性、むこうみずという気質が条件に合致していた。それが16世紀後半になり、艦隊という組織的な力が登場したとき、人間の組織を有機的に動かす能力に長じていたイギリス人に取って代わられたという。表現はともかく、確かにスペインは集団としての能力が弱いというのは実感するところ。