Exposicion mundial de filatelia

 海外在住日記バレンシアの新しい観光名所になっているCAC芸術科学都市で、「世界切手収集博覧会」というのが開催されているので見に行ってきました。
http://www.cac.es/
http://www.correos.es/スペイン郵便局)
 新聞を読んだところでは大したことのない催し物だとタカをくくっていたのですが、これがなかなか充実。全長150mはくだらない巨大な展示場(しかも2層)に、ずらりと展示物が並んでおりました。切手は、どう自己主張が強かろうとも、ひとつひとつは手のひらに乗る小さなものです。それが見渡す限り並んでいるのですから圧巻。
 以前、バルセロナカタルーニャ音楽堂前にある古本屋に入ってみたところ、セピアに古ぼけた絵葉書が売られていまして、路面電車が走っている白黒のものが気に入って買い求めてきました。使用済みのものであろうと、古い絵葉書に芸術的価値を認めて売買するというのが面白いですね。
 じっくり見てまわると数日かかりそうなので、日本のものを探してまわることにしました。面白かったですよ〜 切手が貼り付けられたそのままの状態で葉書や封書が展示されており、どうしてこんなものが?というのが沢山あって。陳列した人は読めない言語で書かれて気にならないのでしょうけれど、プライバシーなど無きが如し。丸善がフランスの商社宛に出した発注書とかいうのならともかく、復帰前の沖縄から「ライオン 奥様プレゼント係」宛に出されたものやら、「近畿大学農学部 高見教授」宛の広告入り葉書とか。自分の出した郵便が、見知らぬ異国で展示されていたら怖いですね〜 というわけで、私が出した郵便物を後生大事に保管しているという方、即刻廃棄処分しておいてください(笑) 国際郵便では、1920年代に入ると欧州向け郵便に“Via Siberia”と朱書きされたものが多数ありました。気を付けて見てみると、それ以前は太平洋を横断して北米大陸を経由する船便になっている。シベリア鉄道の全線開通(1916年)が日本の物流にも影響を与えていたというのが興味深かったです。
 珍しいものでは、乃木希典の署名入り絵葉書がありました。それがなんと、日露戦争の時の写真が刷り込まれたもの。「旅順陥落後水師営ニ於テ一千九百五年一月五日 乃木、ステッセル両将軍会食後ノ撮影」と活字で説明書きがある横に、「御厚情ヲ謝ス」と書き添えて出されたもの。差し出されたのは、奉天会戦終了後の1905年3月28日。司馬遼太郎『殉死』(ISBN:4167105373)で該当する箇所を探し出してみたら、外国人特派員が写真を懇望したので「われわれがすでに友人となって同列にならんだところを一枚だけゆるそう」(文春文庫版91-92頁)ということで撮影されたものらしい。日本戦史のうえでは貴重な資料が、ヨーロッパの地方都市の薄暗い展示場で見られるとは。先日、同じく司馬の『坂の上の雲』を読み、15,000人以上の戦死者を出した乃木(というより、その参謀・伊地知幸介)の無能ぶりに接していただけに、思いはひとしおでした。
Wikipedia - 旅順攻囲戦