八月の狂詩曲

 先週に引き続き、フィルモテカで黒澤明作品の鑑賞。今回は『八月の狂詩曲(ラプソディー)』。

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 おばあちゃんのところにハワイから連絡が来た。70年前に開拓農民として移住した兄からだというが、おばあちゃんには心当たりがない。パイナップル農園の経営で大成功していると聞きつけた父母が一目散にお出かけの間、4人の孫達がおばあちゃんの家で夏休みを過ごす。舞台は長崎、時は八月。おばあちゃんは、ぽつりぽつり兄弟のことを、そして、おじいちゃんの死んだ日を思い出していく――という筋立て。
 分類に当てはめると、反戦反核映画です。といっても、重々しさは感じさせない。声高に叫ぶこともしない。おばあちゃんにとっては、45年前の出来事。怒りとか悲しみといった感情の荒々しさは見せない。穏やかな作品でした。
 青々と伸びる稲穂、茅葺きの屋根、黒光りする廊下の木目、縁側から見上げる月。見たことはないけれど、懐かしい。そんな、美しい夏景色が心に染み渡ります。
 日本語音声+バレンシア語字幕という上映だったのですが、“espiritu de agua”という訳が出てきてのけぞりました。直訳すると「水の精霊」なのですが、元の日本語は何だかわかります? これがファンタジー小説なら「ウンディーネ*1」ですけれど。なんと『河童』だったんですよ。そうか〜 川田もぐる*2も海外ではスピリットの仲間入りかぁ(笑)
 あと、スタッフ・ロールを見ていたら「蟻指導」というのがあって、これまたびっくり。作中、アリの行列を少年が眺める場面があるのですけれど、演技指導付きだったとは。