まちがえたっていいじゃないか

 森毅「まちがえたっていいじゃないか」(1981年、ISBN:4480022074)読了。
 この本が念頭に置いている「読者」は中学生。自分というものを意識しはじめた人達に向け、世の中を傍観する天才である森教授が、のらりくらりと生きていく術を伝授する。
 掃除をさぼったっていいじゃないか。先生を軽蔑したっていいじゃないか。なんでも話しましょう、なんて変じゃないか。やる気を出さなくてもいいじゃないか。悪いことのやり方を少しずつ覚えようじゃないか――
 出版されてから間もなく四半世紀になろうとしているけれど、内容はまったく古びていない。むしろ、自我の目覚めが遅くなってきている今日、大学生どころか、就職したものの世間に打ちのめされてしまった社会人が読んで開眼する啓蒙書かもしれない。なんて大げさなことを言っても、「ちょっとキミ、君」と手招きされそうな愛嬌がたっぷり詰まっている。
 この本の難点は、赤木かん子氏による解説。かなり小馬鹿にした口調で読むに耐えないのだけれど、これも森先生に言わせれば「そんなのだっていいじゃないか」とかわされてしまいそうだ。