「モナ・リザ」の微笑はなぜ神秘的に見えるのか

 岡部昌幸『教養としての名画』(ISBN:4413041011)読了。
 最近、書名に《教養》という文字列を含むものが増えているような気がする。大学教育における教養部は、1990年代に耐用年数が尽きて解体された。それが反転して、今度は《教養》が価値のあるものとして映る時代になったのだろうか――。
 本書は、西洋美術史上で燦然と輝く画家の生い立ちを語り、それぞれの代表作1枚について読み解きとしていく。この手の粗悪なものにありがちなオカルト風の「謎解き」ではなく、対象物に込められた寓意を語るという構成なので安心して読める。文章も平易。
 ただ、要は「名場面集」であるため、それに伴う限界がある。本書でいう《教養》とは、広く浅くの言い換えなので、かなり物足りない。しかも添えられた絵画はモノクロでしかないものも多く、口絵カラーにしても補助線が描き込んであって、到底鑑賞に耐えられる代物ではない。
 手堅くまとめられているけれども、本づくりにかける熱意は感じられませんでした。