パラサイト×2

 山田昌弘パラサイト・シングルの時代』(1999年、ちくま新書)、同『パラサイト社会のゆくえ』(2004年、ちくま新書)読了。
 著者は、「パラサイトシングル」という用語を生成した社会学者。どうも、この人がパラサイト・バッシングの元凶という気がする。というのも、かなり偏向的な視点で捉えており、冷静な分析がなされていない。『〜時代』の方での「平成不況の原因は、親元に寄生(パラサイト)して消費財を購入しない若者の増加が背景にある」といった論調は、あまりにひどい。伝統的な家庭電気製品が売れない理由の説明にはなっても、貯蓄に振り向けられる額が増加していないならば経済の循環を停滞させたわけではないのだから。
 『〜ゆくえ』では、《パラサイト・シングル》のイメージを、前著での「豊かな消費生活を楽しむ若者」から、「自立したくても出来ない不良債権」へと変更している。まえがきで「社会学はナマモノだから」ということを述べているけれど、これほどの転換を社会学という学問のせいにするのは不適切。もともとの見解が、現象の一部しか捉えていなかったというだけのことだろう。
 参照しなければならない図書ではある。しかし、依拠はできない。
パラサイト・シングルの時代 (ちくま新書) パラサイト社会のゆくえ (ちくま新書)