教養としての〈美少女ゲーム〉

http://d.hatena.ne.jp/cogni/20050811/1123724631 に寄せて*1
 美少女ゲームにおいてシナリオへの着目が始まったのは,エルフ(elf)が1992年に「同級生」を投入してからのことだと私は見ています。エロゲーのノベライズとして実質的に最初の成功を収めたのも『同級生――もうひとつの夏休み』(ISBN:4847031156,1994年)だったことが傍証になります。『まほろまてぃっく』以前,中山文十郎という原作者は,こうした流れの中で評価を受けていました。
 そこへ,アリスソフトも『AmbivalenZ ―二律背反―』(1994年)でビジュアルノベルに挑む。そこにリーフ(Leaf)という弱小ソフトハウスが参戦しようとしたとき,特異なシナリオに絞って一点突破をかけた,という構図を描きます。
 ゲームシステムについて言及したのは,「同級生2」あたりで複雑さが高まりすぎたことへの反動としてハイパーノベルが導入されたのではないか,と思えるからです。他方,そうした流れに乗らず,ゲームシステムの練り上げに邁進するによって,剣乃ゆきひろの名作『DESIRE‐背徳の螺旋‐』『EVE burst error』『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』が生まれたものと思います。
 前史から紐解き始めることによって葉鍵系の特質が明らかになる,と考えています。『雫−しずく−』(1996年)は,無から突如浮上してきたものではない。こうした歴史的位置づけは〈へたれインテリオタ〉なら知っておくべき〈教養〉に含めておき,次世代へと伝えていってもらいたいなぁ,ということなのです。

*1:http://d.hatena.ne.jp/cogni/20050809/1123519761 に対する私のコメントに対するコメントに対してのコメントが本稿です。