悪名高き皇帝たち[二]

 塩野七生(しおの・ななみ)『ローマ人の物語――悪名高き皇帝たち[二]』(ISBN:4101181683)を読む。

悪名高き皇帝たち[二]: ローマ人の物語 18 (新潮文庫)

 老帝ティベリウスが没し,カリグラ帝が24歳で即位。しかし政治を知らぬ若者を第一人者(プリンチェプス)に据えたことがたたって放漫財政を呼ぶ。結果,カリグラは殺害され,「パンとサーカス」による治世は3年10箇月で終わる。
 この巻で興味深かったのは,ユダヤ人について(158-204頁)。塩野は,敗者をも同化させたローマにおいて唯一,自ら同化を拒んだ存在としてユダヤの民があったとする。その理由を「多神教を奉じ人間が法律を作るローマ」対「一神教で法律も神が与え授けるユダヤ」という構図で描き,そこに「多神教であり国王を戴くオリエント」との対比を交えながら進める考察が面白かった。