大学院はてな :: 専門学校教員の配転と解雇

 研究会にて,菅原学園事件*1の検討。
 被告Yは専門学校を運営する学校法人。原告Xは,Yの従業員であった者。Xは1995年に採用されて教諭を命じられ,1998年からは就職部企業情報課課長補佐であった。2001年2月24日,YはXが企業訪問を実際に行っていたか疑わしいとして解雇した。本件は,XがYの専任教員職員の地位にあることの確認を求めるもの。
 論点は,(1)X‐Y間において,Xの職種を教員に限定する合意があったか,(2)本件解雇は有効か。
 裁判所は,前者については否定したものの,後者については請求を認めた。
 (1)についてであるが,Xは社会科教諭免許を持っているが,実際に受け持っていた科目はOA実習/秘書検定/簿記/ビジネスマナーなどであり,強い専門性が求められていたわけではないと考えられる。加えて専門学校では,授業に携わり教育内容に明るい者でなければ企業訪問をして説明をすることができないと思われることから,Xを就職部へと配転したことには違法性は無いものと考えられる。
 (2)は,企業訪問をした証拠として名刺が提出されていないことなどがYから主張されているが,どのような記録を作成して提出すべきかという手続的側面をYが整えていなかったことが背景にあるので,これを理由とする解雇は不適当であろう。よっぽど裁判所の心証が悪かったのか,次のような少し変わった言い回しがなされていた。

本件記録表の提出後本件解雇前に,YがXに対し,その旨指摘して,Xに釈明を求めて本件記録表の再提出を求めたり,訪問先に問合せることなどによって企業訪問の有無を確認することは容易であった。ところが,本件全証拠によるも,Yがそのような行動をとったことは認められず,本件解雇に至っている。本件解雇に至るこのような経緯は,始末書の提出や本件戒告処分等により,X‐Yの関係が相当程度険悪になっていたとしても,解雇という最終手段の選択場面においては,本件労働契約の一方当事者として誠実な態度とはいえない

*1:さいたま地裁川越支部判決 平成17年6月30日 労働判例901号50頁