皁鉄絢 『DANDY:LION』

 皁鉄絢(くろがね・けん)『DANDY:LION』(ISBN:477300603X)。玄鉄絢が改名する前に描いていた初単行本。『ZetsuMan』誌にて連載されていたもので,初出は1996年から2000年にかけてと古い。
 舞台は2012年。「国際福祉機構」という偽りの名で呼ばれる国家公安組織に所属する少女たちが殺人許可証を携えて暗躍する――って,要約すると『GUNSLINGER GIRL』と区別つかないぞ(笑)
 以前,『少女セクト』〔1〕(ISBN:4877348824)について触れた際(id:genesis:20050825:p1)には,かなり留保をつけたうえで好意的な評価をした。ところが本作『DANDY:LION』では,気になっていた点が明確な欠点として現れている。好意的に見れば向上の証と言えるわけだが,本質的なところで〈わかりにくさ〉を抱え込んだ作風だと評さざるを得ない。
 作品世界に過剰なまでの設定を盛り込むことで幻惑させ,シーンごとには何とか強引に組み立てているものの,総じて物語は破綻している(その後,端からストーリー性を放棄するという割り切りをすることで『少女セクト』になったのだろう)。連関性に乏しい途切れ途切れの場面をアクションシーンとサイバーパンクとヌードで何とか繋いでいる。各16頁程度の独立した短いエピソードを重ねていくという手法を用いており,あたかも同人誌に発表された実験的習作をまとめ読みしているような感じ。
 時間が巻戻っているぶんだけ技術も未発達で,『少女セクト』で魅せた構図と描線の美しさは片鱗が見られる程度。下手とまでは言わないが,イラストとしての魅力は無い。