オーデンセ

 海底トンネルを走る列車に乗って,隣の島フュン島の中央にある街オーデンセ(Odense)へ。片道1時間30分(往復料金DKK428)。アンデルセン(Hans Christian Andersen)生誕の地に建つアンデルセン博物館(H.C.Andersens Hus)へ(DKK55)。
 これまでにも作家を記念する施設を訪問したことは何度もあるのですが…… 端的に言って,ここはつまらない。童話作家に個人的な思い入れでも無い限り,作家の着ていた服や直筆の手紙を見ても感慨は沸いてこない。実は,彼は歯痛に悩まされていたのです,と聞かされても何とも思わないし。作品そのものに関する展示が皆無といっても良いような状況(あるのは作家の逸話ばかり)なので,アンデルセンという人物を個人崇拝しているわけではない者にとっては面白くないです。文学はテクストで価値が決まると思っているので,初版本であっても感動はしないしね(古い本の質感は好きですけれど)。朗読を聞かせてくれる設備があるにはあるけれど,ここで外国語の聞き取り練習をするつもりもない。加えて日本人の比率が高く,オバサン方の無遠慮な会話が耳に飛び込んできて,どんどん不快になる。

 逃げ出すように博物館を出て,市内を散策。尖塔のそびえ方が美しい聖アルバニ教会(Sct. Albani Kirke)や,気持ちの良い公園に隣接する聖クヌート教会(Sct. Knuds Kirke)を見ているうちに,少しずつ気持ちが晴れてくる。
 ところが,帰りの特急列車(InterCityLyn)は25分遅れ(デンマークの鉄道は,遅延が異常に多い)。座席は満席で座れないし,デッキは換気が悪くて息苦しい。往復の交通費に8,600円も払ったのに…… わざわざ嫌いになるためにオーデンセへ行ったような格好になってしまいました。
 コペンハーゲンに戻ってきたのが19時。こんな気分の時にはハンバーガーとコーラでも食らってやろうかと思いましたが,ますます追い打ちをかけることになりそうなので思いとどまる(反米主義者にとっては,アメリカを象徴する軽薄な飲食物は忌み嫌うべきものであると考えます)。とにかく何か暖かいものを食べて落ち着きたかったので,ホテルの近くにあったセブンイレブンで,ピッツアを1切れとビールを買って夕食にする。