塩野七生 『終わりの始まり』

 ちょっと気晴らしに――と手に取ったところ,勢いで読み通してしまった塩野七生(しおの・ななみ)『ローマ人の物語 XI 終わりの始まり』。
ローマ人の物語〈29〉終わりの始まり(上) (新潮文庫) ローマ人の物語〈30〉終わりの始まり〈中〉 (新潮文庫) ローマ人の物語〈31〉終わりの始まり〈下〉 (新潮文庫)
 塩野による史観の特徴は,従前の歴史家による評価をひっくり返すところにあります。今回は,愚帝とされるコモドゥスの時代にローマ帝国の衰亡が始まったのではなく,その二世代前であるアントニヌス・ピウスの治世,すなわち哲人皇マルクス・アウレリウスへの帝王学の授け方を問題視するのが上巻。
 下巻でも説話めいたところが出てくる。ローマ帝国の軍事政権化は,善意から起こったものであると述べるところ。軍団兵の待遇を良くしようとして給与を上げたり妻帯を認めたりしたことが,軍事関係者が除隊してシビリアンへと還流しなくなったとし,為政者が意図していなかった因果を説く。
 晴れているうちに傘の準備をする――なんてことを説くあたりがビジネスパーソンには受けるのだろうな,などと思いつつ読了。