野村美月 『“文学少女”と穢名の天使』

 先週の金曜日は帯広に出張,土曜日から月曜日までニセコで合宿研究会,火曜日には札幌で仕事,そして水曜日から東京へ出張。この一週間は殆ど自宅にいない日程です。移動時間にしても行きは仕事の準備をして帰りはビールを飲んでくきゅー(*><*)だったり,あるいは自動車を運転していたりで本を読む余裕も無く……。
 今日は研究会のあと暑気払いということで会食を致しました。あまりの蒸し暑さに意識朦朧としながらもホテルに着き,人心地ついたところで久しぶりに読書。野村美月(のむら・みづき)『“文学少女”と穢名(けがれな)の天使(アンジュ)』(2007年4月,ISBN:4757735065)を。
 古典をモティーフにして展開する“文学少女”シリーズの第4作ですが,今回のお題は『オペラ座の怪人』。有望な若き歌い手がクリスマスを目前にして失踪する。果たして誰が《ファントム》で,クリスチーヌで,ラウルなのか。もともと作中世界と参照作品とでパラレルに展開していくので話の筋を追いかけていくのが大変なシリーズでありますが,特に今回は〈歌姫のモノローグ〉に困惑させられました。
 ななせの恋は大きく前進をみるし,〈僕〉と〈天使〉を縛る過去は遠子の読み解きによってほぐされていく。ディケンズクリスマス・キャロル』をも重ね合わせて綴られる光景はキャンドルの灯火のように暖か。なのに,物悲しさをまとってしまうのが“文学少女”シリーズ

 「それが××さんの“真実”よ」
 長く苦しかった物語を,最後の瞬間,清らかな優しい光に満ちた祈りの物語に変える言葉を,“文学少女”が,そっと伝える。
290頁より引用(固有名は伏せ字にした)

 独白については反則気味なところもありますが,本作をミステリーとして読むのは筋違いでしょう。遠子先輩から放たれるメッセージの強さの前には些細なこと。
 あと,カストラートに妄想ひろがりんぐ。