国立新美術館 『静物画の秘密展』

 こんどは日比谷線に乗り,六本木駅で降りて国立新美術館へ。『ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展』(Europian Still-Life Painting from the Kunsthistorisches Museum Wien)を見にいきました。

 展示は文句無しに良かったです。出来たばかりで空間的に余裕のある建物,ゆったりとした配置,程よい光の具合,適度な数の観客。そして何より出品75作品の選定と質。じっくりと楽しんできました。
 企画展の“顔”としてはベラスケスの《薔薇色の衣装のマルガリータ王女》にならざるを得ないのでしょうけれども,静物画という企画からすれば人物画は異質でしたね。会場に入って最初に目にするのが《解体された雄牛》であるというあたりこそが,よっぽど企画の本質でしょうに……。
 今回のお気に入りを挙げるとヤン・アントン・ファン・デル・バーレン(Jan Anton van der Baren)《御公現の寓意》でした。東方の三博士――メルキオール,バルタザール,カスパーの来訪を,人物の姿を描くことなく彼らの携えてきた贈り物によって表現する実に示唆的な作品。

 唯一不満があるとすれば,ビデオプログラムが貧弱であったこと。休憩室でウィーン美術史美術館を紹介する映像が流されていたのですが,わずか数分と短すぎて紹介の役目を十分に果たしていない。加えて,置かれていた椅子の背丈が低すぎるために脚の疲れをとることができません。