大学院はてな :: ジンギスカンとビールの因果関係

 研究会で,学校法人K大学〔高校教諭・停職処分〕事件(大阪地裁判決・平成19年11月29日・労働判例956号29頁)が取り上げられました。
 とある大阪の高校生,約230名が修学旅行でルスツへスキーに来ました。原告Xは,その引率教諭の一人。午後の飛行機で戻る予定であったところ,搭乗予定の飛行機が欠航になったため,その日は札幌市内のホテルに分宿し,翌日の便で戻ることになりました。一行は,新千歳空港からバスに分乗して札幌市に向かい,各自で夕食をとりました。Xらは夕食にジンギスカンを食べたとのこと。食事をしていたところ,近くに生徒がやってきて,食事風景を見られたようです。その後,一行は宿泊先へと移動しました。
 戻ってきたあと,Xらが食事中に飲酒をしていたことを聞きつけた保護者らが問題にしました。本件のポイントは,Xが保護者に向かって謝罪するかどうかでもめたことなのですが,それはさておき。被告Y学校は,緊急事態であるにもかかわらず飲酒をしたことを理由の一つに挙げ,Xに対して停職処分を課しました。
 本件で重要になるのが「サッポロファクトリー」です。元は開拓使麦酒醸造所であったところで,現在はサッポロビールが経営する商業施設になっています。判決は次のように述べます。

 「Xは,平成18年2月4日,高校2年生が参加したスキー学舎において,サッポロファクトリーでの夕食の際,B教諭及びD教諭とともに,各自が中ジョッキ1杯のビール,3人でフルボトル1本のワインを飲食したこと(中略)が認められる。
 これらによれば,本件飲酒は,上記のような状況において少量とはいい難い飲酒をしたものであって,スキー学舎の引率教諭として不適切なものであったというべきである。

 これに対しては異論が続出。「関係者は皆,北海道のことを分かっていないだろう」と。

  • ジンギスカンを食べながらビールを飲まないなど冒涜的行為だ。あやまれっ! ヒツジさんに謝れっ!!
  • ジョッキ1杯のビールは“少量”っしょ。
  • 雪が降ったら飛行機が飛ばないのは当たり前だべや。なんも“緊急事態”なんかでねぇ。

まぁ,本件の場合にはXの事後的対応にも問題があったので,譴責処分ぐらいは致し方なかったかと思われます。しかし,それにしても類似事例に照らすと停職処分3か月は重すぎるというのが印象。矛先を収めず問題を長引かせた保護者の対応も大人げない感じを受けますし,それにおろたえた学校の理事会もまずい。懲戒処分についてゼミで議論するには適した設例でしょう。