米澤穂信 『ボトルネック』
長期旅行から帰ってきてから初めて書店に出かけた月初め,米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の『ボトルネック』が文庫落ち(ISBN:4101287813)したことを知りました。ハードカバー(ISBN:4103014717)版で買ってあったのに未読のまま積んであったんだよね……。半端な眠りを経て夜中に目が覚めてしまったので,読書を開始。
恋人を弔うべく訪れていた〈ぼく〉が東尋坊から落ちてしまう。目を覚ますと,そこは〈生まれなかったはずの姉〉がいる。ここは〈ぼく〉が生まれなかった世界らしい――。
少々SFの入った可能世界の物語。2つの世界は概ね同じだけれども,少しずつ違うところがある。両親が夫婦喧嘩をした際に壁が傷ついた場所が違っていたり,行きつけの店が開いていたり,そして……
エピローグ,すなわち,この世界に迷い込んだ〈ぼく〉による観測結果は痛ましく苦しい。
懐かしくなんかない。爽やかでもない。
ただ美しく清々しい青春など,どこにもありはしない――。
単行本の帯より
結末の1行で読後の印象を大きく変えてみせるところは,ミステリ作家としての面目躍如でしょうか。