島田荘司 『占星術殺人事件』

古戸ヱリカ「私の知る限り、ミステリー史で、もっとも死者が出る連続殺人は、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』の10人です。日本ミステリー界では、多分、島田荘司の『占星術殺人事件』ではないかと。(中略)推理好きならクリスティは必読。日本人なら島田荘司は読破してて当然ですから。」
うみねこのなく頃に』 ep.5

 記憶を辿ってみたところ,島田荘司は未読なのでした。体系的にミステリーを読んでこなかったからなぁ。
 この機会にと思い,上述のシーンの直後で古本屋に発注。いろいろと版が出ているようですが,いちばん新しい改訂完全版の新書(ISBN:4061825712)に状態の良いものが安く売りに出されていたので購入。2晩かけて読了。
 事件が起こったのは昭和11年二・二六事件が起こったその夜のこと,ある芸術家がアトリエで殺された。その直後には結婚して家を出ていた娘が殺され,さらに同居していた娘たちまでもが死体となって見つけられた。ところが芸術家が残した怪文書には,娘6人を切り刻んで合成し完璧な肉体を造ろうとする猟奇的な企みが記されており……
 さっぱり分からず,読者への挑戦(しかも,ご丁寧なことに2度も)の段階でも問題の解き方が分からず。解決編に至ってから「『六**とん**』かよ!」と頭を抱えても後の祭り。この作品の巧みなところは,探偵・御手洗潔が,この「アゾート殺人」を知ったのが事件発生から43年後であり,加えて読者の存在する時間軸はもっと後に設定されている――ことですね。この時代設定でなければ成立しないトリックだし。
 しばらくミステリーから遠ざかっていたということもあり,久しぶりに清々しい敗北感を堪能しました。