かりん

 影崎由那(かげさき・ゆな)「かりん」の第1巻から第5巻までを読む。
かりん (1) (角川コミックスドラゴンJr.) かりん (2) かりん (3) (角川コミックスドラゴンJr.) かりん (4) (角川コミックスドラゴンJr.) かりん (5) (角川コミックスドラゴンJr)
 吸血鬼もの――なのですが、ちょっと“ひねり”が効いています。ヒロイン真紅果林(まあか・かりん)は在日三世のヴァンパイア。なのに、血が増えてしまう増血鬼。月に一度のアノ日には、噛み付いて献血しないと鼻血が吹き出してしまう特異体質。しかも不健康な(?)昼型生活。
 もう1つの特徴は、血の嗜好という要素を組み入れているところ。母は「嘘つき」の血を好む(苦み走った辛口であれば尚良し)。兄は「ストレス」を含んだ血(の持ち主である10〜50歳の女性^^;)が好み。では、かりんはというと……
 こうした舞台設定のもと、同級生・雨水健太とのラブコメが展開される。小気味よく話が進んでいき、飽きさせない。各巻ごとに少しずつ外伝を折り込み、周辺の人物について掘り下げていくというのも好感が持てる作り。

あゆ

 マンガは初めて読んでみたわけですが、好印象を与える作家です。十年以上前から存在は知っていたのですが、これまで避けていたんですよね。どうしても影崎由那の絵を見ると、おぞましい感覚が本能的に呼び起こされて。
 自分でも理由を忘れていたのですが、先日、倉庫を眺めていて思い出しました。
 『あゆ』のせいだ。
 影崎由那というゲームクリエイターの存在は、かなり古くから知っていたのです。“A I R”で霧島聖の医院が出てきたとき、『霧島診療室の午後』を思い出したくらいなので*1
 問題は『あゆ』です。
 これは1996年9月に、BELL-DA(ベルーダ)というソフトハウスが発表。PC-9801からWindowsへのパラダイムシフトが起こったことを象徴する作品でした。ポイントは3つ。(1)FDからCD-ROMへと媒体の大容量化、(2)98VM仕様(4096色中16色)から256色へ、(3)音楽・音声の収録。
 もっとも、これらの技術はFM-Townsであれば登場時から実現していました。PC-98でも、既にSUCCUBUS『禁忌 -TABOO-』が貧弱な環境でありながら声を再生するという偉業を達成しております。それがマルチメディア時代になると、特段の労苦を必要とせずに実現できるようになったわけです。そうした時代の転換点を象徴し、体感させたのが『あゆ』。

 そこまで重要な位置づけにあるのに、どうして忘れていたのかというと、記憶を閉じこめていたようです。うっかりリプレイしてしまい、悶絶。封印解除レリーズしなきゃ良かった……。とにかく「電波」な声で充ち満ちているのです(展開も)。一言で表現すると白痴。ちなみに、『あゆ』のゲームシステムはアリスソフト『あゆみちゃん物語』(1993年)の応用で、新規性は皆無でした。
http://erogamescape.ddo.jp/~ap2/ero/toukei_kaiseki/game.php?game=30

*1:May-Be SOFT の作品。1995年8月発表。影崎由那が原画を担当。