パルマ(2/3)

 午前中は,学校を休んだ id:hajic さんの案内でパルマ(Parma)市内を見て回る。薔薇大理石が美しい洗礼堂を横目に見ながら,ドゥオーモ(Duomo)の中へ。第一印象は華麗だ,だったのですが,だんだん薄暗い光に目が慣れてくると,身廊をフレスコ画が目に飛び込んでくる。これまでフレスコ画は多数見てきましたが,これほどまでに色鮮やかなものはヴァチカンのシスティーナ礼拝堂しか覚えがない。このフレスコ画を見るためだけにパルマを訪れたとしても惜しくはない。それほどまでに素晴らしい。左右6枚ずつ描かれたコレッジョ(Corregio)の手になるそれは,「受胎告知」に始まり「キリストの復活」に至るまでの言行録を題材にしたもの。ただ単に明るい色調を用いているのみではなく,濃色を適度に配して色合いを引き締めて,躍動的な図案で以て見る者に訴えかけてくるのが素晴らしい。
 ドゥオーモの背後にあるサン・ジョヴァンニ教会(Monsterep San Giovannni Evangelista)を訪れ,その左手にある「福音史家聖ヨハネの薬局」の中を通って静けさが辺りを包む修道院の回廊を歩く。
 教会のすぐ南側にある“K2”というジェラート屋で花びらの形に綺麗に盛りつけられた午前のおやつを買い求め,溶ける速度と争いながら甘味を楽しむ。マドンナ・デッラ・ステッカータ教会(Santa Maria Della Steccata)に立ち寄ってから,緑が爽やかなドゥカーレ公園へ。園内のバールで発泡ワインを頼み,適度な暖かさの中で冷たく冷えた飲み物を味わう。

クレモナ

 午後は,列車に乗って1時間ほどの場所にある,ポー川流域の街クレモナ(Cremona)を訪れる(パルマから片道EUR3.35)。
 最初に足を運んだのは,クレモナ市立博物館(Museo Civico ala Ponzone)。ここは,前ルネサンス期に発達したクレモナ派の絵画が充実している。この地域にまつわる作品が中心であり,遠近法が完成する前の時期ということもあって一級品は少ないものの,見応えのある作品は多い。絵画愛好者なら満足できるだけの質は備えている。併設して楽器の模型を展示するストラディヴァリ博物館(Museo Stradeivariano)もあるが,こちらはどうでもいいような代物。
 博物館の中にあるバールで,ちょっと遅めの昼食を摂る。
 ドゥオーモ(Duomo)は,南西方向に取り付けられた大きなバラ窓から差し込む光で明るい。
 共通入場券(EUR8)を買ってあったこともあって,現在は市庁舎として用いられているコムーネ宮(Palazzo del Comune)の奥に設けられたヴァイオリン・コレクション(Salletta del Violono)を見る。ストラディヴァリウスやアマーティが十数本,ガラスケースの中に収まっている。確かに工芸品としても美しいのだけれど,楽器は演奏家が手に持ってこそだと思うので,ちょっと可哀想な気がする。

フィデンツァ

 クレモナは小さな町なので,2時間ほどで主だった場所は見終わる。さて,パルマに帰ろう――としたところで鉄道事故に遭遇。断片的な情報によると,踏切にトラックが突っ込んだらしく,上下線とも100分以上の遅延。
 それならば,ということで急遽,乗換駅フィデンツァ(Fidenza)を見てまわることにする。ドゥオーモは内部の壁が積み上げたレンガによって組まれており,純朴な印象を与える。サン・ミケーレ教会(San Michele Areangela)は,外観の荘厳な雰囲気とは裏腹に,モダンな内装。市庁舎のある広場は,快適な都市空間に仕上がっている。途中,商店街で見るからに美味しそうな食べ物が置かれていたので買い求める。アランチーノ(Arancino)というそれは,もともと南部の携帯食らしいのだけれど,米とハムと卵を絡めたチャーハンのような素材を直径5cmほどの球体に固めたもの。日本で売り出したら,「イタリア風おにぎり」として評判になると思う。
 小さな町のため,他に見るものも無く,駅まで戻ってくる。未だ鉄道のダイヤは回復していなかったが,運良く臨時のバスを捕まえることができ(時間はかかったものの)無事パルマに帰還。
 19時を回ったところだったので,夕食を食べにいくことにする。ドゥオーモから少しばかり南に下ったところにある「ラッザーロ」というトラッットリアで,店の名前を冠した定食をいただく。タルタルソースを添えた桜肉のミンチは絶品。軽く発泡した赤のランブルスコも爽やかに食事を盛り立ててくれる。ワインを各自ハーフボトルほど空けて家路につく。