椎名誠「菜の花物語」(1987年、ISBN:4087726215)。同じような私小説だが、こちらは仕事を通して関わった人達を中心に据えている。もっともシーナ氏の周囲にいる人であるから、相手は編集者であり、探検家であり、妻であり。
 私見であるが、本書をシーナ文学の代表作に推しておきたい。これが『あやしい探検隊』シリーズになると、これはこれで楽しいのであるけれど、酒と海と仲間と冒険という非日常性に目を奪われてしまう。身辺に起こった何気ない出来事を、スルドく観察して小説に仕立て上げたというところは「菜の花物語」の方が上を行く。