The Booking Life

 高田裕三ブッキングライフ』(全2巻)読了。
 移植医療が主題。スーパーマーケットの外商をしていた葛見健太郎は、強盗に襲われて病院へ搬入された。そこで出会った少女・長谷川貴鈴(キリン)。彼女は心臓に障害があり、臓器提供者が現れるのを待つ身であった――という、社会性の強い作品。
 題名の“booking”は、名詞の書籍(book)じゃなくて、動詞「予約する」の方。葛見とキリンは、リンパ球と血清が完全適合。つまり、キリンにとって葛見は格好の獲物(はぁと)であり、臓器の分与を予約しちゃいたい。彼(の心臓)を追いかけているうち、次第に恋心が芽生える、と。テーマの取り方、物語の組み方、人物配置、いずれをとっても高田氏らしい。
 最後は、かなり無理をした終わり方をしている。キリンの病気は移植手術を受けなければ治らない、という設定で始めた以上、結末は限られますからね。(1)キリンが天に召される、(2)葛見が死んで心臓が譲り渡される、(3)キリンが海外へ行って移植を受けてくる、というのが可能性の高い選択肢。そこを無理して(4)奇跡が起こった、なんてことにすると『トリツキくん』の再来だもんね*1
 この物語で選ばれた結末は「仕方ない」とは思うのですけれど、意外性もない。結末を迎えさせないという方法もあったのでしょうが、この作者は《幸せ》に締めくくることを信条としているから…… それが良いところでもあり、物足りないところでもあり。

ブッキングライフ 1 (ヤングマガジンコミックス) ブッキングライフ 2 (ヤングマガジンコミックス) トリツキくん バンブー・コミックス

*1:1989-91年に描かれた作品で、ヒロイン・しのぶは漂泊の幽霊。彼女が転生してくるのを、主人公は16年ほど生き霊として時間待ちをする。