KONNO Kita

 紺野キタ知る辺の道』(ISBN:4344804821)読了。
知る辺の道 (バーズコミックス ガールズコレクション)
 書影を見た時、随分と寒々しく陰鬱な色合いだったので、「この少女は死者の案内人だったりして」と思ったのです。あはは……。

しるべ 【知辺】
知り合いの人。ゆかりの人。「――をたよって上京する」
しるべ 【道標】
知方(しるべ)の意。(1)道案内。先導。(2)知るたより。みちびき。てびき。

広辞苑』第4版より引用

 いや、もう題名からして、上手く出来ています。
 表題作の主人公・真央(まお)には、時折《何か》が落ちてくる。《何か》が真央の中に入り込んで、重なってしまう。その彼女は、取り引きをして見習いに――
 他の収録作「天女」は天女が見える男の子の話で、「きつねの火」は狐の嫁入り(?)の話。などなど、今回はストレートに主題を追っていく、実力勝負、本領発揮の作品ばかり。
 紺野の代表作『ひみつの階段』は、昨今の状況に合わせて「ソフト百合」の面が読み手の側で強調されておりましたが、「この世ならざるもの」を描いた名作でもありました。焼け落ちて今は存在しない旧校舎が、ふと時空を超えて現世(うつしよ)と重なり、迷い込んだ少女の前に道標を見せてくれる悪戯めいた瞬間。その描写は、他に類を見ないもの。
 そんな『ひみつの階段』の不思議要素を主に据え、微笑ましくも感じられるほどに淡い死生観で香り付けをして、ていねいに練り上げた短編集。
 ようこそ、ワンダーランドへ。