大学院はてな :: 女子の深夜労働

 労働法の研究会。本日のお題は、マンナ運輸事件神戸地裁平成16年2月27日判決・労働判例874号40頁)。女性従業員を深夜業務に配置転換したが拒否されたため、懲戒解雇したという事案。裁判所は、請求を認容(解雇は無効)。
http://www.hm.h555.net/~minpokyo/news/432.htm(兵庫民法協:原告側担当弁護士の見解)
 事案の概要を読むと嫌がらせとして行ったことが認められる事案であり、結論は支持されよう。議論では、1999年の労働基準法改正(改悪)で撤廃された女性の深夜業禁止に関する部分に話題が集中。本件についていえば、就業規則よって使用者に委ねられる権限の幅(=時間帯)が広げられたに過ぎず、個別の同意が無ければ変更はされないという解釈が妥当と思われる。
 ただ、判決の理論構成について興味深い指摘があった。従来、なかなか認められてこなかった配置転換における判断基準「業務上の必要性が無く、不当な動機、目的でなされ、かつ原告に社会通念上甘受すべき程度を著しく超える不利益を課するもの」が、あっさり認められていること。今までの判例*1 が厳しすぎるということは言えるのですが、独身で病気に罹患していない女性についてこの法理の適用を認める余地があるとしたのは珍しい。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO049.html労基法
http://www.jil.go.jp/jil/kikaku-qa/jirei/02-Q03B2.htm労働政策研究・研修機構
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/05/s0524-2b.html厚生労働省の資料)

*1:労働者敗訴例として、東亜ペイント事件(最高裁第二小法廷・昭和61年7月14日判決・判例時報1198号149頁)、ケンウッド事件(最高裁第三小法廷・平成12年1月28日判決・労働判例774号7頁)、帝国臓器製薬事件(最高裁第二小法廷・平成11年9月17日判決・労判768号16頁)。労働者側勝訴例としては、明治図書出版事件(東京地裁・平成14年12月27日・労働判例861号69頁)。