大学院はてな :: 国家賠償請求と不法行為の競合

 社会保障法研究会にて、社会福祉法人積善会暁学園事件*1の検討。民間養護施設において入所児童により集団暴行を受けて障害を負った者が、社会福祉法人に対しては民法715条の使用者責任、県に対しては国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償の請求を求めた事例。第一審は、国賠請求のみを認めた。〔→判決原文
 民間養護施設の職員は組織法上の公務員ではないが、公権力の行使を委ねられた者をみなし公務員として「国家賠償法上の公務員」と擬製するというのは判例の蓄積があり、異論はない。
http://www.ops.dti.ne.jp/~andm/data2/2004k12.htm 〔正木宏長氏の講義録〕
 しかし、国賠請求を認容すれば不法行為請求は排斥される、とは必ずしも言えないのではないだろうか――が議論の焦点となった。たしかに判決では、公務員個人に不法行為責任を負わせないとする最高裁判例*2を挙げている。しかしこれは、社会福祉法人の責任を認めない理屈としてはおかしいのではないか。福祉施設の職員個人と、団体としての福祉法人との差異が整理されていなかったように思える。
▼ 措置制度の法律関係*3

*1:名古屋地裁 平成16年11月12日判決 『賃金と社会保障』1387号42頁

*2:最三小判 昭和30年4月19日 民集9巻5号534頁

*3:倉田聡『これからの社会福祉と法』(ISBN:4794440340)24頁より