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 辻大介id:dice-x)氏による試み。大変興味深く拝見しました。
http://d.hatena.ne.jp/dice-x/20050509#p1
http://honwaka.g.hatena.ne.jp/dice-x/
 私は、農業系の専門学校で「文章表現法」という講義を担当したことがあります。要は、就職活動を控えた学生に、エントリーシートや作文を書かせるというものなのですが。これが、ぜんぜん書けないのです。だめなパターンは大別して2つあって、(1)何を書いたらいいのか分からず書き始められない、(2)規定の字数は埋まっているけれど内容が支離滅裂――というもの。
 これは仕方ないかと思います。高校までの学校教育で論理的な日本語を書くという練習を積んできていないから。今までやったことないのに、いきなりやれと言われたって出来るものではありません。事実、私が数回ほど書き方の道筋を教えるだけで、ともかく書き進められるようになる生徒が増えました。「序破急」の3部構成にするといい、というだけで良くなったり、とか。
 とにかく文章を書いてみて、誰かに直してもらう――というのが、最も勉強になります。売られている作文の指導書を読んでも役に立たないのは、「いい作文の例」は載っていても、「悪い作文の何処をどう直せば良くなるのか」が伝わってこないからだと思います。
 で、私はかねてより(大学で職を得たら)大学生を相手にウェブを介して文章表現の演習をしてみたいと思っておりました。前述の専門学校では紙を使っていたのですが、これが大変。提出された課題の中から、「ちょっと手直しをすると良くなる例」を探し出し、朱を入れてから印刷していました(当然モノクロ)。ウェブならば、添削指導の記録を蓄積・配布していくことも容易です。勉強したくなった時には、過去の記録を読み返せば自習できます。「どこかの偉い人が書いた文章」には興味を示さない学生も、同じキャンパスで席を並べる友人知人の文章が直されていく様子ならば関心を向けるのではないでしょうか。
 また、これを読書感想文ではなく「テーマを決めた書評」という形で行っているのも注目すべきところでしょう。テーマを自由に選定させると書けない学生も、課題を設定すれば大丈夫という例が多いのです。読んだ本について書くことにするというのは慧眼。
 私は、文章の指導は国語科ではなく社会科(社会科学)の側で行った方が、論理的な日本語の訓練になると感じています(国語≠日本語)。とある教育大学附属中学校で、ディベートを取り入れてみた事例を見聞きしていますが、文章の訓練とは連動していないように見受けられました(頭の回転が速くて声の大きい子が場を圧倒してしまいますし、年齢的にも無理がありました)。個別に文章を書かせて論理性の不備を直していくというのが、大学におけるリテラシー教育として相応しいのではないかと、今回の試みを拝見して感じました。
 文章を書くことが大変だということを身を以て体験すれば、著作権に対する意識も向上していくと思いますし*1
――そのための要員として、私を採用してくれる大学はないでしょうか? 求人、お待ちしています。

*1:キーワードに辞書の内容を書き写すようなことをやめさせたい