BLOOD ALONE
高野真之(たかの・まさゆき)『BLOOD ALONE』〔1〕(メディアワークス/ISBN:484022921X)。
売れない小説家クロエと、その庇護を受けて暮らす吸血鬼ミサキのお話。とはいえ、そうした設定については輪郭が垣間見られるのみ。まずは物語を示す、という作品づくりの態度には好感が持てる。
この作品は、重厚で瀟洒(しょうしゃ)な雰囲気を備えている。物語進行で夜間になる場面では、コマの間隙を黒ベタにしている。これにより、本作が黄昏を生きる者の物語であることが意識づけられる。作品の位置づけを「ヴァンパイアもの」という観点からみると、意外なまでに正統派*1。
ミサキはかわいらしい。その身に高貴さを漂わせていながら、ちょっとしたことで崩れおれてしまう未熟さがいい。どことなく、遠坂凛(Fate/stay night)に通ずるものがある。
もともとは「クロエとミサキシリーズ」として同人誌に発表されていたものだそうだが、このような作品が商業化されることは喜ばしい。私は、もう5年近く同人誌から離れていたのだが、その間に本作のような作品に接する機会を失っていたことは悔やまれる。
もっとも、“BLOOD ALONE”が名作になれるのだろうかというと、現時点では判断がつきかねる。見ていて微笑ましい、のだけれど、心に残るというのとは違う。まぁ、第1巻は長大な序章であるから、ここで判断を急ぐのは野暮というものだろう。ともあれ、本作に包み込まれた甘く優しい空気はなかなかのもの。表紙を眺めて気に入ったのならば、是非とも買い求めてみることを薦める。
▼ おとなり書評
絵柄だけでも見る価値は充分あります
http://d.hatena.ne.jp/./izumino/20050312#p1
おそらくこれから先しばらく、電撃の新たな顔となる作品だろうと思います。
http://b-chief.org/archives/2005/03/publood_alonev.html