大学院はてな :: 不更新条項付き有期雇用契約

 研究会にて,近畿コカ・コーラボトリング事件(大阪地裁判決 平成17年1月13日 労働経済判例速報1900号9頁)の検討。
 Y社は,自動販売機に商品を補充するオペレーション業務を,100%出資の子会社Zに業務委託することを計画。従前,この業務に従事していたパートタイム労働者(1年単位で契約を更改していた)に対し,平成13年11月20日に次のような説明を行った。

  • 平成14年1月1日以降,当該業務は子会社Zに委託する
  • 当該業務に従事している従業員は,次年度についてはY社で雇用を継続するが,年度末をもって満了とする「不更新条項」を入れる(以後の継続雇用をしない)
  • 子会社Zでの新規採用については未定である

原告労働者らは,同年12月13日ころ,上述の不更新条項が挿入された労働契約書に署名押印している。翌14年10月中頃,子会社Zは面接を行ったが,原告らは採用されなかった(当該営業所所属の33名のうち,子会社に採用されたのは25名)。原告らは,年度末に雇用期間満了を理由に雇止めされている。そこで原告らは,Y社の従業員たる地位の確認を求めて訴えを提起したもの。
 裁判所は,請求を棄却。
 Y社は情報を的確に伝えておらず,「だまし討ち」とも言えるような対応をしたことは正義に反する――という感情論での非難は出来ても,法律論として雇用の継続を求めることは難しいように思われる。労働者にしてみれば「子会社で雇用が継続されるのは当然だ」という期待を抱いていたことは理解できるが,事実認定からすると,会社側はそのようなことを明言していない(どうなるかは決まっていない,としか述べていない)。そうなると「動機の錯誤」とは言えないので,当該不更新条項が無効というのは難しい。従業員たる地位の確認ではなく,損害賠償の請求であれば認められる余地はありそうなところなのだけれど……。
 色々考えてはみたけれど,政治運動ではなく法律論としては上手い手だてが思いつかない。これが「権利濫用」だと言い切れたら楽なのだけれど。う〜
 「そんな契約書には判子をつくな」としか言えないのが悔しい。