アルファさんと振り返る日本経済の夕凪

 芦奈野ひとしヨコハマ買い出し紀行』が14巻をもって完結。素敵な作品でした。最後は加速度的に時間が進んでいって,コーヒーがちょっとしょっぱくなりましたけれど。

のちに夕凪の時代と呼ばれる てろてろの時間
つかの間のひととき

 作品が共感を得るには〈同時代性〉というものも重要な要素でしょう。時代を超えて読み継がれるかどうかとは,別な評価軸として。『ヨコハマ買い出し紀行』が12年間に渡る歩みを止めたことのは,1つの時代の終わりを感じます。
――と,印象論だけで語っても仕方ないので,試しに日経平均株価の足取りを書き出してみました*1

ISBN  発行日  日経平均  セリフ 
1 ISBN:4063210502  1995/08/23  \17,731  「私は多分 この黄昏の世を ずっと見ていくんだと思う」 
2 ISBN:4063210553  1996/02/23  \20,300  「しばらくは帰らないと思う」
3 ISBN:4063210618  1996/07/23  \21,163  「こっ こんなに」
4 ISBN:4063210669  1997/03/21  \18,633  「じわじわと影がうごいてく」
5 ISBN:4063210812  1998/02/23  \16,609  「あ もう 見えなくなっちゃうわね」
6 ISBN:4063210952  1999/02/22  \14,256  「あいかわらず っていうより悪くなってくみたいです」
7 ISBN:406321110X  2000/02/23  \19,519  「少し濃いめにフラフラしようと思います」
8 ISBN:4063211207  2001/02/22  \13,073  「なんか 前 見えないんだけど……」
9 ISBN:4063211347  2002/03/22  \11,345  「日は もうだいぶ前に落ちている」
10 ISBN:4063211479  2003/03/20  \ 8,195  「まあ ゆっくしやんだ」
11 ISBN:4063211592  2004/03/23  \11,281  「待つことだけは得意ワザだから」
12 ISBN:4063211657  2004/11/22  \10,849  「新しい地面ができていく」
13 ISBN:4063211711  2005/07/22  \11,695  「やりたいことが出てきそうな気がしてる」
14 ISBN:4063211762  2006/05/23  \15,599  「人の世が やすらかな時代でありますように」

 以上の調査により,期中最高値(bull)は「ココネの来訪」,期中最安値(bear)は「丸子さんの来店」の時期だと分かりました。
 作品のトレンドと経済動向を重ね合わせるという手法は,新城カズマが『ライトノベル「超」入門』(ISBN:4797333383)が巻末年表で先駆けてやっています。でも,アルファさんのふらふらぐるぐるな歩みと照らし合わせるのが適切な用法ではないだろうか――と思ったので実演してみました。

*1:発行日は奥付の記載に従い,各時点での日経225を http://www3.nikkei.co.jp/nkave/data/index.cfm から割り出した。