大学院はてな :: 郵便関係職員の労働関係

 研究会にて,日本郵政公社(深夜勤等)事件東京地裁判決・平成18年5月29日・判例時報1945号143頁)の検討。
 原告・郵政公社職員が,被告・郵政公社を相手取り,就業規則の改定が不利益変更であるとして訴えたもの。判決文では,まず最初に訴えの確認の利益について説示する。

 被告職員は一般職の国家公務員であるとされ(日本郵政公社法50条),被告は職員の給与についての支給基準,職員の勤務時間,休憩,休日及び休暇についての規定を定め,総務大臣へ届け出ることとされているが(同法55条),他方,被告職員の勤務時間に関する事項については,国会公務員法106条,勤務時間法,同法の実施に関して必要な事項を定めた人事院規則15‐14の適用がいずれも除外されるとともに(日本郵政公社法57条1項2号,8号),被告職員には特労法(注:特定独立行政法人等の労働関係に関する法律)により労組法,労基法等が適用されている(特労法2条3号,4号,37条1項1号)。
 以上の被告の事業内容,被告と職員との間の関係等に照らすと,被告とその職員との間の労働関係は,私法上の行為たる性格を有するものと解するのが相当である。

 こんな大事な判断なのに,こんなにもあっさりと片が付いてしまって良いのだろうか,という不安が……。しかも,この一般論,その後に出てくる就業規則の変更に関する議論と必ずしもリンクしているわけではない。
 判決では,郵政職員の処遇の変更については民間のルールが適用されると述べている。でも,郵政職員の身分については公務員とすることを国会が決議していたわけです。国会決議の意義が,判決では非常に薄い。郵政職員に公務員としての身分を残したことについては《政治》が絡んでくるわけですが,特定独立行政法人郵政公社の他にも色々とあるわけで。そうした組織から争いが上がってきた時には,本件が参照されるリーディング・ケースとなりえます。それだけに,“身分は公務員だけれど処遇は民間”という本件の処理は,ちょっとていねいに点検しておく必要がありそう。