大学院はてな :: 使用者と共謀した執行委員長への損害賠償請求

 研究会にて,日産プリンス千葉販売事件東京地裁判決・平成19年2月22日・労働経済判例速報1971号3頁)の検討。
 原告Xは労働組合の上部団体,被告Y1は会社。そして本件では,組合の執行委員長Y2も被告である。
 X組合は,Y1社を単位とする下部組織としてZ組合を組織していたところ,Zの委員長であったY2がXからの脱退を主導。Xから530名が脱退して新たな労働組合が結成された。脱退後には,Y2の給与全額を会社が負担するなどしていた。
 そこでX組合は,Zを御用組合化するために会社がY2を懐柔し,脱退誘導行為および脱退援助行為を行ったためにXからの大量脱退が起こったものであると主張し,共同不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた。
 裁判所は請求を認容。

 「在籍専従者としての身分を引き続き確保したいという自己保身の目的や執行委員長の退任を迫るXへの反発から,〔Y1社の社長〕及び〔常務取締役〕と共謀し,Y1社の従業員がXから脱退するについて,これを主導する加害行為を行ったと認めるのが相当である」

と認定し,会社と執行委員長が連帯して200万円を支払うよう命じた。
 「労労対立」という構図というのは組合が分裂した時などに時折見られるものである。本件の特徴は,憲法28条に由来する団結権の侵害があったとして労働者個人に対して不法行為によって生じた損害の賠償を命じていること。労使関係法における重要なリーディング・ケースになりそう。