ローテンブルク

 先日ケルンであったH氏と話していて,ローテンブルクのことが話題になった。幹線からは外れた交通の便が悪いところだと聞いていたので訪問予定先からは除外していたのだけれども,指摘されて調べてみると,ニュルンベルクからであれば楽に行けることに気がつきました。
 航空券を購入した時点では,ミュンヘンへ行こうという目論見だったのです。ところがホテルが異様に高い(1泊最低でもEUR120〜)ので,主たる目的地から外したのです。先週になってニュースを見て知ったのですが,今は「オクトーバーフェスト」というビールの祭典が行われている期間だったのですね(ガイドブックは美術館の欄しか見ていなかったので知らなかった……)。それでも,数日前まではニュルンベルクからミュンヘンへ日帰りで行こうと考えていたのですが,鉄道料金を問い合わせると片道最低でもEUR30はするうえに,時間もかかる。ならばいっそのことミュンヘンは諦めて次の機会にしよう,という気になりローテンブルク(Rothenburg ob der Tauber)を組み込むことにしたのでした。『ちっちゃな雪使いシュガー』の舞台探訪にもなるらしいし,ね。
 ニュルンベルクを09時46分に出発,のはずの列車は,いつものように6分遅れ。Neustadtでの乗換時間が5分しかないのにまずいなぁ――と思っていたのですが,乗り継ぎ便だったらしく,乗換客を収容してからの出発。Steinachでもう一度乗り換えて,10時49分にローテンブルク駅到着。空模様が怪しいなぁとにらんでいたところ,旧市街の入口であるレーダー門に着いたところで小雨が降り出しました。雨宿りを10分ほどしたら止んだので,改めて旧市街の中へ。中世の雰囲気をそのまま残している町と讃えられるだけあって,可愛らしい町並み。珍しく,日本語の表示をあちらこちらで見かける(そして,歩いていると日本語が聞こえてくる)。
 まずはヤコブ教会(St.-Jacobs-Kircheに詣でて,リーメンシュナイダーの作という素晴らしい木彫りの祭壇を観る。

 出てきたところ,ちょうど12時だったので市議宴会館(Ratsrinkstube)の壁にある仕掛け時計「マイスタートルンク(Meistertrunk)」が動くのを見る。続いて市参事会堂(Rathausu)に設けられた高さ60mの鐘楼に昇る。入場料を払うところが無かったけれど……と思いつつ昇っていくと,最頂部に係員が待ちかまえていました(最後の梯子は1人ずつ交代で昇降しなければならないので,その交通整理のために居るらしい)。塔上からの眺めは絶景。しかも他に客がいないので景色を独り占めできました(一般的には昼食の時間帯だったので,誰も昇ってこなかった)。

 降りてきてから,中世犯罪博物館(Mittelalterliches Kriminalmuseum)へ。法制史の紹介があるというので行ってみたら,拷問器具が並んでました。ドイツの古文書で使われている「ひげ文字」は図像として綺麗だなぁ,と思いましたけれど,他はどうでも良かったかな。
 13時を過ぎて飲食店が空き始めたので,フランケン・ソーセージ+地ビールの昼食。

 食事を終えた頃にはすっかり晴れ上がって良い天気に。旧市街をぐるりと取り囲む市壁の上は歩けるようになっているという話を目にしていたので,レーダー門(Rodertor)横の階段から昇って時計回りに散策を開始。視線が高いところにあると,市参事会堂の鐘楼が少しずつ表情を変えていく様子が目に出来て楽しい。町の南にあるシュピタール門(Spitalbastel)で通路はお終い。しかし市壁そのものは続いているのが見えるので,検討をつけて小道に入ってみると帝国都市ホールの裏に階段があるのを発見。存在を見つけにくいせいか,南西地区には観光客も殆どおらず,落ち着いた雰囲気を楽しめる。西のコボルツェラー門まで来たところで,いったん町の外へ。紅山雪夫の本によれば,ドッペル橋(Doppelbrucke)まで降りて町を見上げるとローテンブルクが高台にあることが紹介されていたので,お薦めに従ってみる。

下からの眺めも楽しんで再び城壁の中へ。市壁に沿った道が工事中だったのでマルクト広場を経由して西端のブルク公園へ。ローテンブルクの町が生まれた時には城があったのが由来だそうですが,今では建物はなく,手入れの行き届いた公園になっておりました。

 ここまで来て,まずいことに気がつく。酔い覚ましを兼ねて市壁めぐりを楽しんでいたところ,半周したところで既に16時になっていました。日が陰り始める時刻です。ローテンブルクの風景として紹介されることの多いプレーンライン(Plonlein)という交差点を見ておかねば――と向かったのですが,むしろ逆光になってしまって良く見えない。
 引き返したところで,ローテンブルク名物シュネーバル(雪球)があったので食べてみる。硬いドーナツで食感が悪く,見た目とは裏腹に美味しいものではありませんでした。

 お菓子を食べていたせいで時間をとってしまいましたが,16時30分,郷土博物館(Reichsstadtmuseum)に駆け込む。あと30分で閉館というので駆け足で巡ることになってしまいました。ヨーロッパでは「博物館」といっても「絵画館」であることも多いのですが,ここもそのパターンでした。今度は時間をとって来ることにしよう。「職人の館」も「選定候の大杯」も見られなかったしね。
 施設類は閉館の時刻を過ぎても日没までは間があるので,市壁めぐりを再開。北のクリンゲン門から歩き始める。町の北部は新しい家が多く,眼下の光景は見劣りするものの,鐘楼の見え方の違いは来てみないことには掴めない。北西のガルゲン門を通り過ぎ,出発点のレーダー門に戻ってきたのが17時20分。最後に,先ほど光線の関係で引き返してきたプレーンラインを改めて観て,本日の行程を終了。
 10時06分ローテンブルク発,シュタイナッハ,アンスバッハ経由,19時26分ニュルンベルク着の列車で帰還(片道EUR8.9)。