白詰草話

 Littlewitch白詰草話』あらかた終了。
 残念ながら失敗作、かなぁ。先に“Quartett!”に触れ、独創的な動的システムFFDの効果的な使われ方を知ってしまっているが故に、欠点が際だってしまう。
 本作『白詰草話』は、遺伝子工学を駆使し、戦闘能力に特化して創造された生命体《エクストラ》のお話。要は、ろりろりでふりふりな女の子と退廃にふけるという、うらやましいお話。ところが起動直後、主人公の謎めいた独白シーンで「あ、これはまずいな」と思ってしまった。FFD(フローティング・フレーム・ディレクター)は、文章を読ませるのには不向き。そこで、鬱々としたシナリオを読まされたのでは滅入ってしまいます。
 登場人物にしても、型どおり。ムスカみたいな小悪人が出てきたと思ったら、やっぱり『天空の城ラピュタ』を思わせる台詞回しだし……
 本作は、シナリオの分岐が生きていないので、一本道で構成しても問題なさそうです。小説における挿絵のように配置したほうが、むしろシナリオに注力できたのではないかと思う。難解なだけならともかく、不可解なところが多々ある。物語性の弱さ、稚拙さ、不自然さが惜しまれます。
 大槍葦人さんの絵は相変わらず美麗です。音楽もいい。これを立派なCG集と割り切れるなら、決して損はしないでしょう。
http://www.littlewitch.co.jp/

白詰草話 ~Episode of The Clovers~
――と書いて帰宅したところで、これでは批評ではなく批判だなぁと思い直したので補筆。
 絵がいい。音楽もいい。システムも優れている。それなのに……という残念さが隠せないのです。評価基準としてシナリオの質を重視する立場だと、特にね。
 率直に言って、キャラクターが「立っていない」。実験体である少女は、正統たる透花、幼さを体現する沙友、変化をつけるためブロンドにしたエマ。彼女たちは一方的な好意を寄せるだけの、いわば《お人形》。ライバルを演ずる有能な科学者高宮エレンは、敵役に終始する。同僚の女性2人は、片や別れた恋人、残るは男に目もくれない……。この配役で盛り上がる物語にするとなると、パターンになっちゃいます。つまり、年端のいかない少女達を拐(かどわ)かすか、かつての女性と縒りを戻すか。これで主人公がクセのある人物ならば、スパイ映画よろしく美女とあらば誰とでもベッドを共にするというのもあり。でも、そんなことができるタフさに欠ける人物だし。
 つまり、登場人物が出そろった段階で先の展開が予測できてしまった、というのが難点。それを割り切って、うら若き乙女達との快楽にふける娯楽作品として作るなら、それでも良かったと思う。ところが、アクのある野郎を跋扈(ばっこ)させ、さしたる意味を持たない専門用語を散りばめ、しまいには旧約聖書を加えて撹乱させようなどとするから、かえって不快に感じてしまったのです。
 シナリオの不出来が、他の良さを覆い隠してしまった。そんなふうに思えて、残念なのです。