大学院はてな :: 長期間経過後の懲戒解雇

 研究会にてネスレジャパンホールディング事件についての検討。7年半前に発生した管理職に対する暴行傷害事件を理由としてなされた諭旨退職処分の可否について。このように長期間が経過したのは、警察および検察に告訴状が提出されていたものの、不起訴処分という判断が示されるまでに6年を要したため。これまた、判断が分かれた事案。

仮処分*1
 解雇無効。「懲戒権を行使する時期については自ずから限界があるというべきであり……懲戒処分をする目的と事案に応じた社会通念上相当な期間内に行使されることが必要かつ相当」。
本案一審*2
 解雇無効。
本案控訴審*3
 解雇有効。「控訴人は、いたずらに被控訴人両名に対する懲戒処分を放置していたわけではないといえるし、被控訴人両名も、被控訴人会社から処分されることはないであろうとの期待を持ったわけではない」。」

 議論は紛糾し、研究会を二分しての討論となった。
 私は、原審の立場を支持。おおよその目安として2年ほど経過してしまうと、もはや懲戒処分をする必要に欠けると考える。起訴処分となったのであれば、長期間が経過していたとしても懲戒処分を検討することは差し支えないだろう。しかし、不起訴処分となった場合、数年後には事件は《風化》してしまったものとして扱うのが妥当ではないかと考えている。検察の判断を待たずとも、使用者は独自に懲戒処分を検討することが出来る。判断間違いのリスクを避けようとして警察・検察の判断を待ったのであれば、そこで生じる《時間の経過》というリスクは使用者が負担すべきではないだろうか。

*1:水戸地裁龍ヶ崎支部決定 平成13年7月23日 労働判例813号32頁

*2:水戸地裁龍ヶ崎支部判決 平成14年10月11日 労働判例843号55頁

*3:東京高裁判決 平成16年2月25日 労働経済判例速報1890号3頁