美少女ゲーム年代記: 1982「アダルトゲームの誕生」

 日本における最初のアダルトソフトは,光栄マイコンシステム社の『ナイトライフ』(1982年)であるとされる。これは,夫婦生活をサポートするためのユーティリティソフトと銘打たれたものであって,「ポルノ」として売り出されたわけではない。しかしながら,性を扱ったソフトウェアの先駆けとして歴史に名を留めている。
 その後,同社からは《ストロベリーポルノシリーズ》の発表が続く。少女を相手に「お医者さんごっこ」をする『マイ・ロリータ』(1984年),コンドームのセールスマンが訪問販売に訪れ「実演」する『団地妻の誘惑』,火星から逃げ出したダッチワイフを追跡する『オランダ妻は電気ウナギの夢を見るか?』といった続作が作られていく。

 『マイ・ロリータ』の作者である望月かつみは,これに先だって『ロリータ・シンドローム』(1983年10月,エニックス)を発表している。

 線と面で構成されベタ塗りされるアニメ絵は,性能の低いパソコンであってもそれなりに表現することが可能である。しかしながら,そういった技術的な事情よりも,1980年代初頭におけるコミック界隈の傾向を直接に反映したものとみるのが自然だろう。この時期は《ロリコン絵》のスタンダードを打ち立てた吾妻ひでおが活躍していた頃であり,少女アニメが爛熟期に入りつつあった頃である。時代を代表するアニメとしては,この前年に放映が開始された『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(1982年3月~)を挙げることができる。もっと濃密なところでファンジン文化に目をやれば,庵野秀明赤井孝美山賀博之らによって“DAICON III”オープニングアニメが制作される(1981年8月)などしており,アニパロ文化が発展を遂げつつあった時代状況がゲームの後背地として存在していた。

 それに対し,劇画的な描写を採る作品が多いのも黎明期の特徴であろう。極端にデフォルメされたロリコン少女が見受けられる一方で,大人の色香を漂わすグラマラスな女性像も数多く登場する。

 その後,ゲームに登場するヒロインの姿は一定の方向性を持つようになるのだが,その経過については【1986「〈美少女〉の生成」】の項で述べることとする。