maid (1)

 半ば、昨日の続き。既に登録されていたキーワードに「メイドさん」というのがあったのですが、気になるところを手直しして書き加えているうちに、ぜんぜん原文とは別物になってしまいました。冒頭の2文しか、名残をとどめていません(汗) それがWikiというものだから、いいよね?
 このあと別な人が書き換えて行くと思うので、ここに id:genesis 版を保存しておきます。

メイドさん
 maid
 辞書では「メード」と表記されていることが多い。この訳としては「侍女」「女中」「家政婦」等があるが、これらの訳語が用いられた文脈の中に、萌えの要素を見いだすことは困難である。単に「メイド」と称するならば、市原悦子が演じる『家政婦は見た』の家政婦(日本の近現代)ないし『トムとジェリー』に足だけ登場する黒人おばさん(20世紀初頭の米国)までも広く含めることが可能である。
 オタク文化に於いては、萌えの対象となる場合を区別して「メイドさん」と称する用法が一般的。これを作為的に用いている例として、中山文十郎ぢたま某まほろまてぃっく』が挙げられる。「メイドさん」とする場合に、「眼鏡っ娘」「猫耳」等と同様に萌え要素の1つとしての意味合いが濃厚となる。
 その起源をたどると、PC-98x1シリーズ向けに発売されたゲーム「殻の中の小鳥」(BLACK PACKAGE、1996年)によって「メイドさん物」という分野が確立し、続作『雛鳥の囀』(Studio B-ROOM1997年)によって発展に至ったとするのが通説である。
 「メイドさん」を表す記号としては、エプロンドレスが服装として用いられるが、これは19世紀末の英国・ヴィクトリア様式に依拠するものである。というのも、そもそものメイドという存在が、産業革命の進展*1 に伴って生じた中産階級の存在と密接不可分であり、当時の社会的・経済的階級の存在を背景として成立しているためである。この点については後掲『震空館』に詳しい。エプロンドレスといえば、ルイス・キャロルが著しテニエルが挿絵を描いた『不思議の国のアリス』で有名。この作品は1865年に英国で出版されており、まさにヴィクトリア女王が七つの海に君臨していた時代(1837年-1901年)の産物である。また、名探偵シャーロック・ホームズがベーカー街に住んでいたのも1881年から1904年にかけて(コナン・ドイル卿が彼の物語を著わしたのは、1887年から1927年にかけて)であるから、この時代を知る上で格好の資料である。
 かかる萌え要素の登場は大いに反響を呼び、ゲームの他にもアニメや漫画へと瞬く間に波及。コスプレ等においても高度の人気を持つに至った。2003年には、メイド喫茶の乱立を招くまで加熱する。また、斎藤環がその著書『戦闘美少女の精神分析』に於いて「ファリック・ガールズ」と名付けた方向への分化も起こる。この例としては、前傾『まほろまてぃっく』や、柴田昌弘サライ』が挙げられる。

▼ 関連資料
震空館(メイドさん社会史学ゼミ)
http://homepage3.nifty.com/shinkukan/
The Rabbit Hall(チャールズ=ラトウィッジ=ドジスン研究)
http://www.hp-alice.com/
追記
http://d.hatena.ne.jp/genesis/20040125

*1:英国では、ワットが蒸気機関を改良したことがきっかけとなり、1790年頃から工業化が著しく進んだ。