スペイン語版『ネギま!』の呪文がカタカナな理由

 西語版『魔法先生ネギま!』の紹介記事を目にする。出版社のサイト*1を見てみると,2006/02/24 に第3巻が刊行されるようですね。
http://blog.livedoor.jp/adidas243/archives/50379409.html隠れオタは夜に萌える
 ちょうど,日本語版の既刊をすべて買い込んできたところだったのですよ(いずみのさんの『ユリイカ』論考を読むための資料として)。実は,今まで少年漫画を読んだことが殆ど無かったりします*2
 さて,翻訳紹介記事を読んで面白いと思ったのは,呪文の話。ラテン語に添えられたルビが日本語(カタカナ)のままになっているというのを聞いて,なるほどなぁと。どうしてかと言うと,ネギの詠唱している呪文,たぶんスペイン人であれば意味が通じているのですよ。だって,私でも分かりましたもの。スペイン語は,元々は「ラテン語の方言」ですから。
 最初にまとまった文章が出てくるのは7時間目だったかと思いますが,[誓約の黒い三本の糸よ 我に三日間の制約を]を対訳してみると,次のようになります。

【羅語】 tria fīla nigra promissīva, mihi līmitātiōnem per trēs diēs!!
【西語】 tres hilos negros promisorios, me da limitaciones por tres dias!!

 ほら,そっくり。ちなみに,スペイン語で fila は入場待ちの「列」を意味します。ここでは「糸」ですから hilo にしましたが,元のままでも十分通じますね。
 というわけで,よくワカラナイ神秘の呪文なはずが,南欧中南米の人にとってはありふれた日常会話になってしまうのです。「黒い紐でボクを縛って〜」みたいな。それで,謎めいたニホン語をルビをとして添えたまま残したのでしょう*3
 まぁ,面倒だからそのままにした――という可能性も無いわけではありません(^^;) 修正が大変な「描き文字」である

【羅語】 aer, aer, amplificet mammas!!
【西語】 aire, aire, amplifica mamas!! *4

の方を直していたりするので一貫性が無いようにも見えますから。善意に解釈すれば,これはコマの内側で縦書きが発生するのを嫌ったのでしょうね。日本語の話者は縦書き/横書きが混在していても自在に読み分けますけれど,ヨーロッパ系語族の人たちは縦書きだと視線が誘導できませんから。
 ともあれ,マギステル・マギを目指すなら,詠唱の練習にスペイン語をどうぞ♪ 話者の消滅したラテン語と違って,実際に使えますよ。


▼ 関連

*1:http://www.edicionesglenat.es/

*2:これまでの人生で少年向け週刊漫画誌を1度も買ったことがないのです。高校に入ってから白泉社の少女まんがを単行本で読むようになったん。そんなわけで,昨秋の時点では『AI止ま』の第1巻しか3大少年漫画誌掲載作を保有しておりませんでした。これにしても,パソコン通信時代に赤松健が話題になったことがあって買ったものだし……。そのような事情があって,私のマンガ考察はズレたところがあると思うです。

*3:あと,欧州のオタクの間では,ひらがな&カタカナを修得するのが KOOL ですし。

*4:かなり即物的で「空気よ 空気よ おっぱい大きくして」の意。ちなみにお母さんの意味で用いる「ママ」の語源は,ここに乳房の意味で登場している mamma(s) である。