大学院はてな :: 月給制から日給制・時給制への変更

 研究会にてアサヒ急配事件(大阪地裁判決・平成18年5月25日・労働判例922号55頁)を検討。
 トラック運送業を営む会社において月給制で就労していた労働者が,一方的に時給制ないし日給制とされたうえ賃金を引き下げられたため,差額賃金を請求したという事案。

  • 原告X1: 月額23万円 → 時給750円(=月平均所定労働時間の就労だと月額13万0,500円)
  • 原告X2: 月額26万3000円 → 日給9700円(同上20万8,000円)

 裁判所は請求認容。
 当然の結論だと思われる。月給制から日給制/時給制へと変更することは(メリットがあるかどうかはさておき)労働法上の問題はないが,時間単価を切り下げるためには〔1〕労働協約による改訂か〔2〕就業規則の不利益変更でもない限り,〔3〕本人の同意が無ければ行うことはできない。本件においては,そのいずれも存在が認められていない。
 契約の変更には,新たな契約が必要。契約論の基本から外れたことを言う会社側の主張は「苦し紛れ」としか見えない。*1

*1:なお,上記の結論には影響を与えていないが,会社の対応には不当労働行為(労働組合に加入している労働者の嫌悪)をうかがわせるものがあった。実際の問題状況とはズレたところで本件紛争が生じているのだろう。